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加福多恵

加 福 多 恵 青森県南津軽郡藤崎町に生まれる。
弘前高校在学中より油絵を描き始める。
卒業後、上京。

1985年より、隔年ペースで個展開催。
近年、毎年個展を催し、現在に至る。

庭を造る        加福多恵

 鳥の声が聞こえます。それは、今はもう失われた、古里の荒れ果てた庭の木の実を啄むヒヨドリの声の、幽かな記憶を呼び覚まします。あまり手入れもされず、半ば野生と化した木々や花々。胡桃。李。桜ん坊。梅。すぐり。グズベリー。牡丹。芍薬。あやめ。鬼百合。紫苑。沢山の名も知らぬ草花。それらは季節毎に、勝手に雑草の間に実り、花開き、荒れた庭を彩ってくれていました。

 涼しい風が吹く北国の夏。子供は丈高い雑草の間で半日を過ごし、虫の視点でものを視、たまには鳥に習って木の実を摘んだりしながら倦むことを知りませんでした。そこには、時も流れることを止め、何者も侵入して来ない、閉ざされた空間、まさに楽園そのものでした。
 今さら、現実の庭を取り戻そうと思いませんが、絵の中に理想の庭を造り、その中に遊ぶ、密かな楽しみを得たいという企ては、成功しつつあるのでしょうか。
 何も知らないヒヨドリが、辺りの静寂を破って、また、陽気に囀り始めました。

            画集『鳥聲集』より


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